春の花材として、私がひそかに心を寄せている花のひとつが「ラナンキュラス」です。
そのまあるいフォルム、幾重にも重なった花びら、そして花ごとに異なる色のグラデーション。手に取るたびに、「わあ、きれい」と何度でも声が漏れてしまいます。
花材探訪:春の丸みと色彩
この花とじっくり向き合うことになったのは、あるお稽古でのことでした。
いつもより少し大きめの花が選ばれていて、それをどう主役に据えるか、バランスをどう取るか。
試行錯誤の時間が始まりました。
ラナンキュラスは一見柔らかそうに見えますが、茎が思ったよりも繊細で、角度を少し間違えるだけであっちを向いたり、こっちを向いたりしてしまいます。スルリと花器から抜けてしまいそうになることも。
ただ挿すだけじゃなく、その花が一番自然に立っていられる場所を探すこと、ラナンキュラスは、自分の心地よい居場所を知っている花のような気がしました。
今回の一作では、やや低めの位置に主役の花を据え、枝ものとグリーンで包み込むように仕立ててみました。
中心に咲くラナンキュラスが、春の陽射しを受けてふんわりと光るように見えたとき、「あ、これだ」と感じたことを覚えています。
花の「重心」を感じた時、気持ちがパッと明るくなりますね。

花びらに宿る色彩の魔法
ラナンキュラスの魅力は、何といってもその色彩。
ピンク、黄色、オレンジ、グリーンがかったホワイト……。同じ種類なのに、咲き進むほどに表情が変わる花は、まるで絵画の中にいるよう。
ひとつひとつの花は、まるで内側から発光しているよう。
その輝きは決して強く主張するものではなく、見ている人の心にすっと入り込んでくるような優しさを感じさせてくれます。そして、ラナンキュラスは、どの角度から見ても違う表情を持っています。
ふんわりと丸いシルエットのなかに、中心に向かってきゅっと締まった構造があり、そのコントラストがまた美しい。
中心を覗き込むと、奥に秘められた深い色合いがそっと姿を現すこともあり、その一瞬の発見に胸が高鳴ります。
この花が春の代表格である理由は、華やかさだけでなく、その内側に静けさや奥ゆかしさを秘めているからなのかもしれません。

春のまあるい魔法
ラナンキュラスは、春のきらめきと繊細さがぎゅっと詰まったような花。
生けているあいだに、少しずつ表情を変えながら、こちらの迷いにそっと答えてくれるような不思議な存在です。
これからも何度でも使いたくなる花材。
そしてきっと、そのたびに新しい気づきをくれるはずです。
それでは、今回はこの辺で。
花と猫、そしてちょっとの探訪記
いけばなとともに、今日もひと息。

