雨音がリズムを刻むこの季節、
道の片隅や軒先、公園の斜面で、ふと目に留まる紫陽花(あじさい)の花。
曇り空の下でそっと佇む姿も、雨粒をまとってなお鮮やかな色も、
どこか静かで、でも力強く、梅雨という季節に寄り添うように咲いています。
紫陽花の色は「土」の声
紫陽花といえば、なんといってもその多彩な色が魅力です。
青、紫、ピンク、白……一株の中にも、複雑なグラデーションが見られることも。
この色の違いは、実は「土の性質(pH)」によるものなのだそう。
酸性の土壌では青、アルカリ性だと赤っぽくなる──自然の摂理が、こんなにも繊細な表現を生むのだと思うと、不思議な気持ちになります。
まるで、土がその年の天候や環境を語っているようにも感じられます。

長谷寺の紫陽花
紫陽花といえば、鎌倉・長谷寺のあじさいを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
斜面いっぱいに咲き誇るその景色は、訪れた人の記憶に深く刻まれるほど。
私自身も数年前、訪れたことがあります。
見渡すかぎりの紫陽花に囲まれながら、傘を差しつつ歩いた参道は、どこか夢の中のようでした。
紫陽花の見頃は意外と短くて、あっという間に色褪せていってしまうけれど、
だからこそ、「今しかない」その美しさが、心に残るのかもしれません。

いけばなに生かす紫陽花
いけばなの花材としての紫陽花は、やや扱いが難しい存在でもあります。
花首が重く、水下がりしやすいという特性があるため、事前にしっかりと水揚げをしておくことが大切。
葉も大きくて枚数が多いので、余分な葉を整理しながら、花の動きが活きるように工夫が必要です。
ただ、その分、上手くいけられたときの紫陽花の美しさは格別。
ふわっとした花房のボリューム感は、いけばなの中でも特に印象的な存在になります。
「ひとつひとつの小さな花が集まって、大きなかたまりになる」──
そんな紫陽花のあり方は、作品の中でも、どこか“寄り添い”や“重なり”の表現に繋がるように感じています。
また、先日のお稽古のあとには、教室で開かれていたドライフラワーのリースづくりにも参加させていただきました。
そのとき使った紫陽花は、瑞々しさから少しずつ色を変え、時間とともにアンティーク調の落ち着いた表情に。
「生けた後も、まだ美しく在り続ける」という紫陽花の魅力を、いけばなとドライ両方の視点から改めて感じることができた時間でした。
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花のある暮らし、季節のリズム
梅雨というと、つい「鬱陶しい」「洗濯物が乾かない」なんてネガティブに捉えがちだけれど、
紫陽花の花を見ると、こんな雨の季節もまた、悪くないなと思えてきます。
そしてその季節感を、いけばなを通じてもう一度味わうことで、暮らしの中に、少しだけ丁寧な時間が流れてくるような気がするのです。
今度、おうちいけばなでも、紫陽花を使ってみようかな。
少しずつ色づき始めたあの花たちが、どんなふうに器の中で息づくのか、想像するだけで楽しみになります。
それでは、今回はこの辺で。
花と猫、そしてちょっとの探訪記
いけばなとともに、今日もひと息。

